論文に関するコメント

昨年,Nature Communに出した不斉アシル化反応の論文の続きとして,ジオール類のエナンチオ選択的アシル化反応に関するフルペーパー2報がWebに掲載されました.

 

1報目はAdvanced Synthesis & Catalysisに掲載されたd,l-1,2-diolの速度論的光学分割反応です.これは鎖状・環状の様々なd,l-1,2-diolを光学活性DMAP誘導体で分割するというもので,わずか0.5 mol%の触媒でジオールの化学選択的なアシル化が進行します.基質一般性も広く高いselectivity factorが出ます.10 gスケールの反応にも適用可能な系に仕上がりました.また詳細な検証実験の結果,触媒のヒドロキシル基と反応基質のジオール部位が水素結合を介して不斉認識をしていることを明らかにしました.VIP (Very Important Publication)に選ばれ,初のカバーピクチャーに採用されました(まだWebには出ていません)

 

2報目はThe Journal of Organic Chemistryに掲載されたmeso-1,2-diolの非対称化反応です.これは1報目の速度論的光学分割と似た反応で,わずか0.1 mol%の触媒でジオールのアシル化による非対称化反応が進行します.良いエナンチオ選択性は発現するのですが,なぜか環状だと6員環の基質しかうまくいきません(色々やったのですが...).ただ鎖状基質と6員環のジオール類に対しては,ほぼピンポイントでアシル化でき,高いエナンチオ選択性が発現します.さらに詳細な検証実験の結果,反応加速とエナンチオ選択性の発現には触媒のヒドロキシル基は1つだけで十分ということが分かりました.触媒合成の簡便さの面から今後も2つのヒドロキシル基をもつC2対称の触媒を使いますが,原理的には触媒のヒドロキシル基は1つで十分ということです.

今はSteglich反応を高エナンチオ選択的に進行するものが東京化成工業より販売されておりますが,上記の2つの反応を促進する触媒についても近日中に販売される予定です

 

あとこれまで我々が行ってきた不斉求核触媒に関する日本語総合論文が有機合成化学協会誌の6月号に掲載されました.岡山大学に着任して,どのような考えのもと研究を進めてきたか丁寧に書きました.ご協力くださった関係各位の方々にお礼申し上げます.